この世に舞い降りた美獣



彼は歩いていく。
行き先は決まっていた。いつものパチ屋だ。
だが、彼の心はパチ屋の台には無かった・・・

パチ屋に近づくと、店の騒がしさが外に漏れている。
今日の楽しみが始まる。

しかし、彼はパチンコもパチスロも目的ではない。
客として来ている女が見たいだけなのだ。
店内の6割は見渡せる休憩スペースのイスに座り、
彼は目を滑らせる。

自分が何を目的にしてココへ来ているか、
それを感づいている人が多数いる事も知っている。
それでも、これしか日々の楽しみが無いのである。

彼は28歳の会社員、人並みに生活する金は稼いでいる。
顔は極端にブサイクではないが、一度たりとも女と付き合った事は無い。
オシャレらしい事は一切せず、仕事場から背広姿でココへ来る。
自分と同じ程度の女を狙えば、仲良くなる事も可能だ。
しかし気質のせいか、タイミングの無さのせいか、女と仲良くできた事は一度も無い。

彼はお手拭を取り、顔を拭う。
標的はいずこか・・・
女だと確認できる人間が店に入れば、確実に目で汚す。
良い女だと判断した相手は、通り過ぎたあとも背中を目で追う。
彼の趣味としては、女が一人、あるいは女同士で店に来るより、
彼氏と一緒に来るほうが良い。
家に帰り、寝る前にその男になった気で、その女とセックスしている自分を想像し、
オナニーするからである。

彼が目を真剣に向ける女は、普通にモテると思われる女ばかり。
顔も、服装も、髪型も手間をかけている女たち。
なぜこうも美的感覚は世間と同じであるにも関わらず、
彼は自分の外見には手間をかけないのか?
人間の心の微妙な謎はその辺にあるのである。

28歳には28歳の今風もあれば、ユーモアも自信もある。
それを手にすれば女の体に触れる事ができるのに・・・

若者とは言えない年齢ではあるが、更に年上にも元気が沸いている人もいる。
理想には届かなくても、最低限の喜びは世間に隔たり無く並ぶ人なら得る資格はあるのだ。

彼は想う、
「オレは今まで、想像の中ばかりの楽しみに生きてきた。
その時間がふくらませた自由自在の想像力を使えば、
そこらの想像力の乏しい人間のセックスに近いオナニーをする事ができる」

常人には手応えの無い幻も、
彼ならば、形に沿って手に感じる確かさがそこにあると言う。
美的感覚が同じなら、まさに良い女とヤリ放題である。
彼はこれまで、その想像を用いて何人の女とセックスしてきたのだろう・・・?


彼は今日も向かう。いつものパチ屋へ。
オナネタではなく、セックスする相手を求めて・・・



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